奈良県奈良市
「奈良スターミュージック」
近鉄奈良駅の地下ホームに乗入れる阪神電車。
かつてこのホームに神戸三宮行きの電車が乗入れるなどとは
到底、想像も出来ませんでした。
阪神尼崎から西九条止めだった「西大阪線」が延伸され近鉄なんばに直結。
これで山陽電鉄線、神戸高速線、阪神線、近鉄線と
姫路から名古屋まで私鉄のレールが1本につながったという事で
なんだか感慨深いものがあります。
さてそんな事を考えながら駅前のアーケードを進みますと
奈良スターに通った当時と変わらぬ町並みが続きます。
とはいえ、ここも他の商店街同様にシャッターの下ろされたままの
店も散見され、中心商店街の空洞化は観光地のアーケード街とて
例外ではないということを感じさせられます。
奈良スターミュージックへの路地入り口あたりも商店が変わり
危うく通り過ぎるところでした。
奈良スターミュージックは多くの関西の他の劇場と同様
繁華街からやや外れた住宅街ともいえる場所にあり
古都の面影も残る町家の路地裏に忽然と存在していました。
扇型のような不定形な場内は大きな透過アクリル板の
回転盆を囲むようにスツールタイプの腰掛が並ぶレイアウトで
晃生系劇場に共通する雰囲気でした。
場所柄、やはり夜は場内の客数はもとより街の人通りも減り
終演後、奈良駅まで戻る道行きが大層寂しく心細かった思い出があります。
その一方、乗り込んだ近鉄電車では生駒山のトンネルを抜け
峠にさしかかるあたりでの眼下にパーッと広がる大都会大阪の
まばゆいばかりに煌めく夜景のなんと美しかったことか。
初めて目にしたときの感動は今も忘れません。
そんな奈良スターミュージックの建物も今は無く、
その同じ場所にはカフェギャラリーが出来ていました。
瀟洒な戸建ての一軒家のようなギャラリーを見て、あらためて
こんなに狭い場所に劇場が建っていたのかと、ちょっと驚かされました。
当時の面影を残すものは手前の駐車場とフェンスぐらいで
ここが無くなっていたら、この場所を思い出せなかったかもしれません。